ニューヨークのスズメやリス、そしてイルカ

ニューヨークで暮らして約2年にもなると、随分アメリカに染まった頃かと思われがちですが、相変わらずです。というのも何かにつけて日本と比較して考えるので、日本にいる時よりむしろ日本について考える機会が多いからです。例えばスーパーに行った時も「これは日本より安い」とか「これは日本のより高いのにまずい」などといちいち比較してしまいます。

山田花子さんのマンガに、「スズメってかわいいけど、鳩ってなんだか気持ち悪いわよねぇ」と言ったら「なんで?ねえなんで?」と彼氏に問いつめられて泣く彼女の話がありました。たしかにスズメってかわいいけど、鳩は気持ち悪いですよね。たぶん日本人の大部分がそう感じていると思います。「舌切り雀」の中で、「悪い婆さん」という設定のおばあさんが、障子はり用のデンプン糊をなめたスズメの舌を切るシーンがあるのをみても、やっぱり日本人ならで誰でも「スズメが舌を切られるなんてかわいそう!酷いババアだ」と感じるという前提があるのがわかります。

ニューヨークにもスズメはいますが、あまりかわいくありません。日本のよりちょっと大きめで模様もぼんやりしています。しかもなんだかすすけているので「やっぱりNYは日本より乾燥しているから砂埃にまみれてるんだな」と最初のころは思っていたのですが、よくよく見たら埃ではなく頭の上の部分に元から灰色の斑点がありました。鳴き声も「チュンチュン」というより「ジュジュジュ」という感じです。小さくて模様がキレイでかわいらしく鳴く、というのが揃っているから日本のスズメはかわいいということがよくわかりました。もしかしたらニューヨーカーは「舌切り雀」を読んでも「糊をなめたスズメが悪い。舌を切られて当然だ」と思うかもしれません。

日本の街中では見かけないけれど、マンハッタンでは身近な動物がリスです。リスがヒョイっと現れて、タタタと走り去っていくのに出くわすと、慣れてきたとはいえやっぱり「かわいい」と思ってジッとみてしまいます。ところが、こちらの子供が棒でリスを追っ払っているのをみて、どうやらニューヨークではリスはかわいい動物という枠に入っていないようだと気づきました。珍しい、というのもかわいさの要素なのかしれません。

ちなみにネズミの扱いは日本と同じです。地下鉄の駅構内で、私の前を歩いていた白人女性が曲がり角で叫び声をあげたので「死体でもあったか!?」と思ったら、ドブネズミがいただけでした。「ニューヨークの駅に死体」というのも思い込みが強いな、と後でおかしくなりましたが、結構思い込みで「かわいいか、かわいくないか」が決まるということもあると思います。日本人は「リスとスズメはかわいい」とみんなして思い込んでいるのかもしれません。

さて、なぜ鳥の話をしたかといいますと、これも思い込みからです。震災後、アメリカの報道が気になってNew York Timesのインターネット版を日に何度もみてしまうようになりました。ここ数日World Newsのページの右端に「灰色の鳥」がのっていて、「気持ち悪い鳥だな」とずっと思っていたのですが、今朝よくよくみたら「イルカのななめ横顔のアップ」でした。思い込みはよくないですね。

それにしても前から思っていたのですがイルカは本当にかわいいでしょうか?私はイルカをテレビで観る度に「気持ち悪い」と思います。タコ、イカが気持ち悪いのと同じようにイルカが気持ち悪いです。以前、伊豆で浅めのプールでユラユラしながらレタスを食べているジュゴンをみましたが、それも鳥肌がたつほど気持ちが悪かったです。どうやら私は水の中にいるプラスチックの様なものが苦手らしくて、ディズニーランドのジャングルクルーズも怖いです。水面からプラスチックがどんどん出てくるのがものすごく気持ち悪い。イルカは国際的に「かわいい」と思われているようなので、きっと私の個人的な趣味の問題だとは思うのですが、珍しさと思い込みをいったん脇に置いて、是非もう1度じっくり考えてみてほしいです。イルカがかわいいというのは気のせいじゃないでしょうか…

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この文章は「fellows! vo.17」(エンターブレイン)に寄稿したものです。
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by mag-akino | 2011-06-20 21:52


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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