上を見上げて、さらに下を確認する

夏のマンハッタンを歩いていると上から水が降ってきます。雨かなと思って見上げると、大抵クーラーからの水です。こちらのクーラーは、窓を少し開けてはめ込むというのが一般的で、そこから水がポタポタ垂れるのです。きちんとネジなどでとまっているはずですが、見上げるたびに「いつか頭に落ちてくるのではないか」と考えてしまいます。

上を見上げるといえば。
私の実家はマンションの7階で、帰宅するたびに下から自分の部屋の窓を見上げる癖があります。小学校低学年の頃、学校からの帰りにいつものように上を見上げたら、私の部屋のさらに右斜め上、10階の踊り場の壁の「外側」のでっぱりに若い女性が座っていました。

今考えると完全に「飛び降り直前を第一発見」なのですが、全く気づかず「大人が遊んでいる!」と興奮して真下に走って行きました。下には女性のローファーの靴が転がっていて、さらに興奮して(ブランコから靴を飛ばして距離を競う、という遊びをよくしていたのでそんなものかと思った)下から手を振ったら目が合いました。そうこうしているうちに管理人さんに伝わって、女性は取り押さえられました。「来るな」と言われたのですが、こっそり見に行って再び目があった女性は、20代前半の普通のOLみたいな人でした。

この出来事を思い返して描いたのが「2001年版逆さの思い出」というマンガです。あの時の女性が自分だったらと想像すると妙に現実味があり、落下途中の逆さの風景を生々しく思い返すことさえできる、というような内容でした。

実はこの話にはさらに続きがあります。マンガの原稿を編集部に届けた数日後、大学から帰宅すると、ちょうど私の部屋の下あたりに2、3人の人が遠巻きに集まっていました。嫌な予感がして近づくと、若い女性が「ぺたん」という感じで落ちていました。「私がマンガに描いたせいであの時の女性が今度こそ飛び降りてしまった」ように思えてものすごく怖くなり、編集部に無理をいって掲載を取りやめてもらいました。

もちろん女性は別人だったのですが、それ以来私には「上を見上げて、さらに下を確認する癖」がつきました...という怖い思い出を、10年たったので書いてみました。
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by mag-akino | 2011-08-02 09:50


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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