もう一回

大学生の時、「テレタビーズ」というイギリスの子供番組のキッカイなキャラクターが好きになり、よく観ていた時期がありました。

「ますますキッカイ」と思ったのは、番組の中で「全く同じ映像が二回流れること」でした。お腹のテレビに映し出された映像が終わると(テレタビーズの頭にはアンテナがあり、映像を受信するとお腹のテレビに映る)、テレタビーズたちがキャーッと喜んで「もう一回!もう一回!」と叫び、本当にもう一回、全く同じ映像が流れます。「…何だこれは?」と思い、友達に話したら「幼児は同じことを繰り返すのが好きなんだよ」と言われました。

同じことを何度も繰り返す、と言って思い出すのは、中学高校時代の電車通学です。私は6年間、往復2時間半ほどの電車通学をしていました。そしてそのほとんどの時間、椎名誠さんの「哀愁の街に霧が降るのだ」と夢野久作短編集を読んでいました。

「哀愁の街に霧が降るのだ」は椎名誠さんの自伝的小説(ご本人としては「他伝的バカ話」だそうです)で、厚めの文庫本上下二冊組でした。上巻のはじめの方の高校の入学式で、みるからに不良の椎名さんの耳元に、ごく普通の新入生の沢野ひとしさん(あのイラストレーターの沢野ひとしさん)が「空気銃で撃つぞ!」と囁くシーンがあります。私はなぜかこのシーンが異常に気に入っていました。

また夢野久作の「死後の恋」の、好きな女性のはらわたの中から宝石をほじくり出す件や、「白菊」の部屋の中の雰囲気、「空を飛ぶパラソル」の轢かれた女のお腹の様子なども、何度読んでも心を掴まれて「もう一回!」という気持ちになりました。

つまり「ものすごく好きなごく一部」をより楽しむために全編を隈無く繰り返し読んでいたのですが、全編となると好きなシーンにたどりつくまでそれなりに間があります。一巡すると最初からもう一回!と延々と繰り返し、7冊ほどの文庫本で6年間過ごしてしまいました。

テレタビーズの「もう一回!」に、ハッと恥ずかしくなりつつも、今でも同じことを繰り返すのが好きです。アニメーションは制作過程で似たような作業を長時間繰り返します。アニメーションを作りたいというよりも、一人で長時間同じことを繰り返したいからアニメーションを作っているのではないかと思うこともあります。
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by mag-akino | 2011-08-09 08:41


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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