上野と日光で立ち尽くす

メトロポリタン美術館やMOMAで、「子供の頃から知っている有名な作品」に出会うと、いちいち新鮮に感動します。意外と小さいんだなぁとか、地味だと思っていたのにすごい存在感があるなぁ、とか本物を観ると改めて気づくことがいろいろあります。4方の壁全部にそういうものばかりが並んでいると息苦しくなるほどですが、「衝撃をうけて立ち尽くす」という経験は今までに2度しかしたことがありません。

1度目は幼稚園生の頃、両親に連れて行かれた美術館(たぶん上野の西洋美術館)でキリストの磔の絵を観た時のことでした。この絵は有名な画家の有名な作品ではなかったのですが、「人間が手足を釘で板に打ち付けられる」というエピソード自体をそこで初めて知りました。こういう怖いものがあって、それを大人が囲んで眺めていて、今日は私も観ていいんだ!とドキドキして眺めていたら、いつの間にか両親の姿がみえなくなっていました。

2度目は修学旅行で日光に行った時です。ガイドさんに引き連れられて、いろいろ観てまわった他のものは特に覚えていませんが、「眠り猫」は忘れられません。すごい小さい!かわいい!小さい!かわいい!とじっと観上げていたら、またいつの間にか、よその小学校の生徒に囲まれていました。

どちらもそれ以来観ていませんが、もう1度観たいかというと複雑です。と、いうのも、これも子供の頃に美術館で観て好きになった絵と、2008年にBunkamuraで再会した時のことです。大人になって直に観てみると、色が浅く、タッチも雑で、縮小して印刷されたものより大分乱暴な印象を受けました。記憶に残っているしっとりとした印象とは全然違ったので、「観なければ良かった」とがっかりしました。今でもこの絵が好きで、影響も受け続けると思いますが、それは子供の時に観たあの絵に対する気持ちです。

絵だけではなく音楽でも、聴いた時の気持ちや場所にピッタリとあって、異常なほど心に響くことがあります。それでもう1度続けて聴くともう全然ダメになっていることもあるので、タイミングも大切なのだと思います。それにしても「立ち尽くす」ほどの衝撃を受けることは稀なので、やはりこの二つは特別な作品です。一度目のキリストの絵は既にどの絵かわからないので安心ですが、眠り猫はどこにあるのかもわかっているので気になります。福島で事故が起きた時も、東照宮は割と近いよなぁとボンヤリ思いました。
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by mag-akino | 2011-12-28 07:37


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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