A4くらいの角張った座敷童

誰でも一つや二つは「あれは一体なんだったのだろう」という体験があると思いますが、私にもいくつかあります。そのうちの愉快だったものについて。

アニメーションは制作過程で動画をたくさん描きます。「てんとう虫のおとむらい」という作品を作っている頃、編集前の動画を入れておくためのちょっとした箱が必要になり、母に空き箱がないかきいてみました。「納戸にあるかも」と言うので、2人で探してみたら、奥にA4よりひとまわり大きめの丁度よさそうなものがありました。取り出して振ってみたら「カタカタ」と何かが入っている音がして、あけてみたら空でした。

思わず母と顔を見合わせて沈黙してしまい、今でもたまに「あれは一体なんだったのだろう」と思い返します。絶対に何かが入っていた手応えがあり、柔らかいものではなくて、「プラスチックの定規かなにか」かな、と蓋をあける前の一瞬に思ったのを覚えています。「座敷童をみると、不思議と怖い気はせず、なぜか幸せな気持ちになる」と聞きますが、私もあの時のことを思い出すと、なぜか幸せな気持ちになるので「A4くらいの角張った座敷童が蓋をあけた瞬間に逃げた」と思うことにしました。

テレビで観る怪奇現象は、ものすごく怖かったり、やけに感動的だったりして大袈裟です。「…こんなことは私の人生では絶対おこらない(おこったらやだ)」と感じますが、「A4くらいの角張った座敷童」程度の不思議だったらそのうちまた遭遇するだろうと思っています。実際の怪奇現象(というか、「やや不思議なこと」)はもっと地味だったり無意味だったりするはずです。遭遇した時には「これは一体なんだろう」と考えるけど、「わかんないなぁ」と思っているうちに忘れてしまう程度の不思議だと思います。

こういう話をすると、「私には全くそんな体験はない」と言い張る人がいますが、たぶん忘れているだけです。以前、私が「やや不思議なこと」を話している時に、ふと見たら顔が真っ青になっている人がいました。たぶん全く忘れていた何かを、話を聞いているうちに思い出してしまったのだと思います。きかなかったけど、「やや」ではなく「だいぶ不思議」だったのかもしれません。
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by mag-akino | 2012-01-09 09:55


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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