風船を放したこと

今思い出せることの中で、具体的に場所と時期がわかっている一番古い記憶は「兄の幼稚園の運動会を見に行った時のこと」です。兄は3つ年上なので、2歳の時の記憶です。

その運動会の最後に、幼稚園の庭から子供が全員で(その場にいた園児以外の子も)風船を飛ばしました。今は環境に悪いということでやらなくなったようですが、当時は「子供が一斉に風船を空に飛ばす」というのは一般的なイベントだったと思います。

親に抱えられて園庭の真ん中に行き、風船を渡されて喜んでいたら、「今日は放すのよ」と言われました。見上げると、空に色とりどりの風船が飛んでいました。このイベントは私が園児になった時も継続されており、その時は風船に手紙と花の種(たしかヒマワリ)をつけて飛ばしました。あの時、兄の風船には手紙と種がついていたのかもしれません。

この時のことを思い返すと、空に飛んでいるたくさんの風船が頭に浮かびますが、実際にこれが強く記憶に残ることになったのは、その光景がきれいだったからではないと思います。ほとんどの子供はそうだと思いますが、私も子供の頃なぜか風船が好きでした。それでたまに親に頼んで買ってもらったのですが、その時に必ず言われたのが「放しちゃだめよ」という言葉です。上を見ると、必ずどこかに誰かが放してしまった風船が飛んでいるので、子供心に「糸を放したらもう帰ってこない」と緊張しました。「今日は放していい」ということへの驚きとうれしさで、この出来事が忘れられなくなったのだと思います。

結局、私が飛ばした手紙の返事は届きませんでした。何人かには返事がきたので羨ましくて、私のはどこにいったんだろうと、どこかをフラフラ飛んでいる風船を想像しました。「天空の城ラピュタ」のエンディングで、大木が飛行石と一緒にどんどん空へ宇宙へ昇って行くところをみると、風船を放したことを思い出します。
b0221185_1034938.jpg

[PR]
by mag-akino | 2012-01-23 10:13


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


by mag-akino

プロフィールを見る
画像一覧

近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

以前の記事

2017年 03月
2016年 11月
2015年 07月
2014年 12月
2014年 09月
2014年 07月
2014年 03月
2014年 02月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 09月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月

フォロー中のブログ

検索

カテゴリ

全体
未分類

その他のジャンル

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧