応用の仕方を知りたい

しばらく前のことですが、絵がとてもうまいミュージシャンの方が「絵が描ける人は音楽も作れるはずだ」と仰っているのを聞きました。君にもたぶん作れるよ、と続いたのですが、私は自分に音楽が作れるとは全く思えなかったので、黙り込んでしまいました。私の納得いかない、という顔を見て、「つまりね」と例え話まで出して「どうして絵が描ける人は音楽も作れるのか」を丁寧に説明してくださったのですが、その例え話も隅から隅までさっぱりわかりませんでした。(なぜそれが、この説明の例えになるのか、そこのところの関連性さえわからなかった。)

私は普段、「これはいい」とか「それをやってはダメ」とか、自分なりの基準で絵を描いています。こう言うとまるで、しっかりと文章になったマニュアルでもありそうですが、そうではなくて、自分としては確かだけどいざ言葉にしようとするとなかなかそうもいかない、というようなものです。つまり漠然としているので、お腹がすいたとか、頭が痛いとか、面倒臭い、とかちょっとしたことで判断が狂いがちです。

このミュージシャンの方の音楽と絵には共通の雰囲気があり、「音楽と絵の二つ別々の基準がある」というより、「一つの共通の基準」に沿って作られているように感じます。私の基準は絵にしか使えない基準ですが、この方の「音楽を作る基準」は「絵にも応用がきく基準」なのかもしれません。でもたぶん、その基準も、他人に説明しても何がなんだかさっぱりわからないくらい言葉になりにくい、でもこの方にとっては確実なものなのだろうと思います。絵と音楽だけではなくて、「不思議の国のアリス」のルイス・キャロルのように、「文学に応用できる数学の基準」というのもあるのかもしれません。

音楽、数学、文学のどれも全く手の届かないところにあり、憧れることしかできないように思えますが、「応用がきく基準を持っている」のではなく、「基準を応用する方法を知っている」と考えるとちょっとは可能性がみえてきます。1人でやるとできなかったり、できるようになるまで時間がかかったりすることも、できる人がちょっとコツを教えてくれると、すんなりできるようになることがあります。誰かが私に「絵の基準を他に応用するコツ」を教えてくれたら、もしかしたらどうにかなるのかもしれません。ただ、「人に大人しくものを教わる素直さ」と「人がものを教えてあげたくなるような人柄」の両方に、自信がありません。
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by mag-akino | 2012-01-27 07:46


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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