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いつか遺骨だけになる

絵を描いている時に、フッと油断して引いた線が、せっかく丁寧に描き進めてきた絵を台無しにしてしまうことがあります。また下地からやり直したり、もうやり直しがきかなかったり、その程度はいろいろですが、こういう失敗をする度に「作る労力と壊す労力が同じでないのはなぜだろう」と思います。

昔、友人に訊いてみたら「壊れている状態の方が自然だからではないか」と言っていました。そう言われてみるとそんな気もしますが、作るのは大変なのに、壊すのは簡単というのが、どうも自然でない気がします。その差の分の労力はどこへ行ってしまうのでしょうか。

そもそも「作る労力と壊す労力は釣り合うはずだ」という考え自体が間違っているのかもしれません。なぜこんなふうに考えるようになったかというと、中学の化学の時間に「地球上の原子の数は常に一定である」と習ったせいだと思います。いろいろなものが形を変えながら常に一定の数を保っているのなら、作る労力と壊す労力が同じでないのはなんだか不自然です。

一本余計な線が入っている絵(壊れている物)と、入っていない絵(壊れていない物)では、例え同じ値がついたとしても、作者としてはまるで違うものです。壊れていない物の方が壊れている物より価値があるのは、「作る労力」と「壊す労力」の差の分のエネルギーのようなものを、まだ内包しているからかもしれません。

(余談ですが、「地球上の原子の数は常に一定である」という理論でいくと、地球はいつか遺骨だけになってしまうのではないかと墓参りをする度に思うのですが、どうなんでしょう。)
いつか遺骨だけになる_b0221185_9194421.jpg

by mag-akino | 2012-02-08 09:20


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


by mag-akino

近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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