チェルシーヨーグルトスカッチと幼虫の腹

子供の頃に、祖母がよく「チェルシー」という飴をくれた。チェルシーは今でも販売されている、黒地に花柄のデザインの薄い紙箱に詰められた、あのチェルシーである。バタースカッチは味が濃くて苦手だったのだが、ヨーグルトスカッチは大好きだったので、緑の柄のパッケージが祖母のハンドバッグから出て来るとうれしかった。私が、「透明感がある緑がかった白」が好きなのは、このチェルシーヨーグルトスカッチに由来していると思う。

実際のチェルシーヨーグルトスカッチは、透明感はあるが緑がかってはいない。しばらく食べていないのではっきり思い出せないが、白い、というほど白くもない飴であった気もする。子供の分類でバタースカッチは茶色、ヨーグルトスカッチは白、ということだったのだと思う。そしてそのまま、パッケージの緑と、透明感のある飴のイメージが重なって、緑がかった白いものをみると、チェルシーヨーグルト味を思い浮かべるようになった。

緑がかった白いもの、といってもう一つ思い出すのが、カブトムシの幼虫の腹である。あれもよくよく考えると緑がかってはいないのだが、なぜか緑色がかった印象を持っている。私の理想の「緑がかった透明感のある白」そのものなのが、「羽化の途中の蝉」であるから、カブトムシの幼虫に対して緑色がかった印象を持っているのは、蝉からの連想かもしれない。ずっと昔、机の下にカブトムシの幼虫がいる絵を描いた時は、迷わず緑がかった白で塗った。

そう言う訳で、カブトムシの幼虫を見ても、羽化途中の蝉を見ても、反射的にチェルシーヨーグルト味を思い浮かべているので、実は「おいしそう」という印象を持っている。実際に口にいれてしまったことはないし、これからも舐めたりはしないが、ずっと「おいしそう」と感じ続けると思う。また、サーモンピンク、という色に対しても「おいしそう」と感じているのだが、こちらは理由がわからない。

絵を描く時もなんとなく「口にいれた時にいい感じかどうか」を基準に描いている気がする。口にいれた時にいい感じ、というのは、瑞々しいとか、少しやわらかいとか、うっすら甘い、という感じなのだが、視覚をどうやってそれらの感覚に置き換えているのかはわからない。これも細かく突き止めていくと、チェルシーヨーグルトスカッチのような子供の頃の色と味(食感)に関する記憶が何かあるのだと思う。




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by mag-akino | 2012-11-03 09:42


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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