ウソみたいな本当の話 その2、ストーカー事件内実

前回書いた、ウソみたいな本当のストーカーの話の中に、ややこしくなるので書かなかったもう一つのウソみたいな本当の出来事があり、今回はその話である。

警察に電話をかけても力になってもらえず、窓から外をみたら自宅マンションの下にストーカーが立っており、このまま行ったら玄関の前に立たれるのも時間の問題だ、と切羽つまった時、彼はパタリと姿をみせなくなった。

なぜ彼は突然ストーカー行為をやめたのだろうか?ものすごい罪悪感に襲われて反省したにしても、兄への興味が一気に覚めたにしても、何かが彼の心を大きく動かしたと思われる。その何かとは何なのだろうか。私は直接の被害者でないせいもあり長年これが気になっている。

ここで思い出すのが祖父のことである。警察に相談にのってもらえなかった母は困って、祖父に電話で事情を説明したのだった。すると心配性の祖父は「わかった、任せておきなさい」というようなことを言い、電話を切り、そしてストーカーはパタリと来なくなった。

祖父がとった行動は、神仏に祈る、というような祈祷のたぐいであったらしいが、私はよく知らない。祖父はもう亡くなってしまったので、具体的に何をどう祈ったのかも確かめることはできない。事件が収束したことで、家族全員「良かった良かった」というのんきな気分になってしまって、「犯人はなぜストーカー行為をやめたのか」を誰も気にかけなかった。私が「犯人の心変わりの理由」に野次馬的興味がわいてきたのは、写真館で彼を発見した後のことである。ストーカーの彼とは、その後、兄と一緒に近所を歩いている時にすれ違ったこともあるが、まるで兄を知らないかのような無反応で、心変わりというよりも兄のことを「忘却」したかのような態度であった。

ストーカー本人に心変わりの理由をきいてみる、というのが一番手っ取り早いが(実家の近所に住んでいるようだし)、ややこしくなると困るのでこれはできない。兄への執着が一晩にして覚めるほどの心変わりである。何かが彼に起こったのは間違いないだろう。

思い返すと祖父に関して「不思議だな」と思った出来事がいくつかあるが、その時は「そういうものだろう」とそのままにしてきた。「あれは一体どうしてだろう?」と興味がわいて「知りたい」と思ったのは、祖父が亡くなってからである。不思議なことについて詳細を確かめる、というのは面倒なことであり、面倒なのは、想像以上に不思議だった時に対処する自信がないからである。「知りたい」という気持ちも、「もう手遅れ」なことがわかった上での気持ちであると思う。



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by mag-akino | 2013-01-06 07:01


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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