ハエの思い出

①祖父とハエ
たしか小学校の低学年の頃である。私は居間の机で折り鶴を折っており、祖父がそれをジッとみていた。折り終わり、翼を左右に広げて胴体をふくらませ、「ハイ」と祖父に渡した。祖父は神妙に鶴をひっくり返し、おへその部分にある穴を指差し、「ここからハエを入れるんだ」と言った。折り鶴の胴体の部分にハエを入れると、鶴がゴソゴソ動いて楽しいそうである。


②教授とハエ
多摩美術大学二年生の時である。その日は二クラス合同の講評会であった。生徒は作品を教室の前に並べて好きな場所に座り、二人の教授がそれぞれ目に留った作品から講評していった。私は左端近くの最前列の椅子に座ってぼんやり聴きつつ、目の前を飛んでいるハエをなんとなく目で追っていた。ハエはしばらく作品と生徒の間をブンブン飛び回っていたのだが、私の目の前で突然直角に落下し、そのまま死んでしまった。「目に見えない毒空気の塊に突入して即死」といった感じだった。ハッとして顔をあげると、同じくハッとした顔の教授と目があった。




その教授は私のクラスの担任の教授で、私と同じく、もう一人の教授の講評をぼんやり聴きつつ、ハエを目で追っていたと思われる。教授のあの時の顔と、祖父の「ここからハエを入れるんだ」と言って笑った顔が忘れられない。この二件の出来事の後、教授と祖父に対する親しみがより深くなった。

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by mag-akino | 2013-01-28 15:18


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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