宜保愛子さんについて

ここ十年ほど、夏になっても心霊番組が放送されずつまりませんね。今年は夏に個展があるので帰国しますが、心霊番組がないと思うと夏の日本は湿度が高いだけなので帰りたくありません。

というのは冗談だが、半分本気なくらい、私は夏の心霊番組が好きだった。夏になると本当にもう毎日のようにドシドシと心霊写真特集や、本当にあった怖い話再現ドラマが放送されていた印象があるのだが、あれらはどこにいってしまったのだろうか。

恐らくデジタルカメラの普及で心霊が写り込む隙がなくなったのと、フォトショップの普及で心霊の信用度が落ちたことが原因だとは思うが、宜保愛子さんが亡くなったのも大きな原因の一つだと思う。

本物の霊能者かそうでないかは別として、私は宜保さんが好きだった。相談者の話を聞く時の真剣な眼差しも頼り甲斐があったし、独特のイントネーションのある落ち着いた語り口も引き込まれた。夏とは言わず、年がら年中放送されていた宜保さんの心霊番組二時間スペシャルはほぼ全部観ていたので、宜保さんが本物がどうかに関わりなく、私は本物の宜保さんファンだったと思う。ファンだから「本物だと思うことにしよう」と、私だけでなく多くの人が宜保さんを信じていたのである。

そんな宜保さんが亡くなって、ちょうど十年たつらしい。ご自身の意思で葬儀は親族のみの密葬だったそうだが、宜保さんの死は大きくとりあげられることもなく、ひっそりと亡くなってしまった。亡くなってしばらくの間は「宜保さんが亡くなったと噂できいたけど、それって本当?」と思っていた記憶もあるが、本当にそのくらい静かに、いつの間にかいなくなってしまったのである。

夏が近づいてくると「最近心霊写真をみないな」と気づいて、「そういえば宜保さんは」と考える。そして宜保さんを思うと、必ず思い出してしまうのが宜保さんの絵のヘタさである。宜保さんは霊の声をきいて、事件現場の状況や部屋の中の様子をスケッチブックにマジックで描くのだが、とくかく絵がヘタで何が描いてあるのかさっぱりわからなかった。あまりにもヘタクソで具体的に描いたはずのものが漠然と抽象的になっているので、後づけで七割くらいのものは正解に押し切れるのではないか?というような曖昧さであった。宜保さんご自身も「絵が苦手」という自覚はあったようで、「これはこれを表しているんですよ…」と自分の絵の解説をする時にちょっと照れて笑っていることもあった。私の知る限り世界一絵がヘタな女性である。(そういうところも魅力的でしたよね。)

(つづく)


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by mag-akino | 2013-05-04 02:01


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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