宜保愛子さんについて 余談

余談である。
ある日、小学校から帰宅すると、知人が家に遊びにきていた。おやつを食べつつ話しているうちに、私は昨晩観た「宜保愛子心霊スペシャル」のことをふと思い出した。そして、知人に「昨日も宜保さんの霊視はあたっていた」と言った時である。彼はキッパリと「宜保さんの霊視は偽物である」と言い切った。

宜保さんは霊の声ではなく狐の声をきいている、と知人は言った。彼によると、神社に祀られているような位の高い狐以外に、野狐(ヤコ)と呼ばれる狐がいて、それが宜保さんのために働いている、とのことだった。例えば相談者の部屋を霊視する時、その狐を使いに出して、あっという間に部屋を見て帰ってきた狐が耳打ちする、という方法で宜保さんは相談者の部屋の様子を言い当てているのだという。それがどんな遠くにあっても、知らない場所でも狐は一瞬で行くことができる、「だから宜保さんの霊視は偽物である」と説明した。私ははじめて知ることばかりで、ポカンとしつつ聞いていたのだが、知人の口調にははっきりとした宜保さんへの非難が感じられた。

「宜保さんの霊視が本物か、偽物か」については、当時もよく検証番組が放送されていた。特に大槻教授とは何度も対決していたが、大槻教授の言う「偽物」とは「宜保さんは霊視する対象をあらかじめ下調べしておいて、霊視しているように見せかけている」という意味であったと思う。知人の言うように、「宜保さんは狐の声をきいて霊視していた」場合、大槻教授はそれを「偽物」と言っただろうか。知人は狐を使った霊視を「偽物」と言って非難したが、では知人にとっての「本物の霊視」とはどういうものであったのかは私にはわからない。

宜保さんの話のついでに知人は、狐がいかに恐ろしいかを私に語り聞かせた。「コックリさん」とは野狐のことであり、遊び半分で呼び出していると帰ってくれなくなること、道で狐につきまとわれて手で払っている女性を見たことがあるなど、これもまたはじめて聞くことばかりで、子供だった私は心底怖くなった。

この日以降も、私は相変わらず宜保さんの番組を見続けた。宜保さんの霊視が本物か偽物かは別として、私にとって宜保さんは「本物」のままだったということだと思う。そして、知人の話が本当かそうでないかは別にして、私は今まで一度も「コックリさん」をやったことがない。知人の話もまた、私にとって「本当」だったということである。


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by mag-akino | 2013-05-20 11:25


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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