日常の「魔」

ここ二ヶ月ほど、気掛かりなことがあり暗めにぼんやりしていたせいか、いろいろとおかしなことがあった。いろいろ、といっても、そのほとんどが「道端にカエルがいるのを目撃する」という出来事で、結果的には全て「見間違い」であった。

要するに、「手のひらサイズの暗い色のもの」が視界に入ると、それが全て一瞬カエルにみえるのである。道端には「手のひらサイズの暗い色のもの」がたくさん落ちているので、何度も「あ、カエル」と思っては、「いや、石だ」とか「いや、葉っぱ」とか思った。実家で「あ、カエル」と思ったら、タワシだったので、なんだかシンとした気持ちになり、これが「魔がさす」ということかと感じ入った。

たぶん、普段なら「手のひらサイズの暗い色のもの」が視界に入っても、それが何であるかなどは気にとめないのである。ただ、暗い気持ちでぼんやりしていると、それらがぼんやりしたところにつけ込んでくる。すぐに「いや、石だ」と気づけるうちはまだ元気な証拠で、もっと落ち込むと四方八方をカエルに囲まれて取り乱したりするのに違いない。

そもそも私は昔から何度も石をカエルだと勘違いしてきたのだ。長い時は一ヶ月ほど石を「カエルだ」と思い込んでいたこともある。主に中学、高校の下校時の出来事で、もしかしたらその時も何か気掛かりなことがありぼんやりしていたのかもしれないが、もう覚えていない。何にしても私にとって「魔」とはカエルの姿をしているようだ。

「魔」といえばもう一つ、私の日常生活に度々現れる不穏なものが、鳥の死体である。何か嫌なことがあった時にぼんやり道を歩いていると、鳥の死体に出くわしてしまうのだ。「ああ、またか」とガッカリするのだが、私はこれも「魔」のようなものと思っている。こちらは見間違いでなく、本当に鳥の死体なので、「カエルの魔」とはちょっと違うのだが、遅れて来た凶兆、というか「ダメのダメ押し」みたいで、大変憂鬱なものである。これももしかしたら、「嫌なことがあった時に鳥の死体を目撃する」のではなく、「元気な時には鳥の死体を見てみぬふりしている」のかもしれない。やはり鳥の死体も「魔」の一種である。


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                               「女子高生百鬼夜行」2000年
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by mag-akino | 2013-11-12 04:44


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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