「よく見ろ」

私が11か12の日曜日のことだ。誰からかは忘れたが、何か箱に入ったものをいただいた。私はその箱をあけようとしていたのである。しかし、その箱がどうしてもあかないのだった。

変わった作りの箱で、どこが蓋でどこが本体かもよくわからなかった。適当に蓋っぽいところを引っ張ったりしてみたのだが、どうしてもあかないので、そばで新聞を読んでいた父に「あけて」と差し出した。父は一言「よく見ろ」と言って、また新聞を読み始めた。

私は仕方なくもう一度箱を見た。箱の角をそれぞれよく見てみると、蝶番の部分の構造がわかった。蓋と本体の境もわかったので、そこに爪を入れて引っ張ってみたら箱があいた。

今でも箱を開ける時はもちろん、「なんかよくわかんないな」という時に、この言葉を思い出し実行している。よく見てみると、わからないものがわかるようになることは実際に驚くほど多い。たぶんそんなつもりで言ったのではないと思うが、この父の「格言」はかなり役にたっている。

一方、母の格言は「目を見て話さない人を信用してはならない」というものであった。この言葉は、大人になった今考えてみると疑わしいところがある。長い付き合いの仲の良い友人で、今まで一度も目が合ったことがない人がいるが、彼女はただの照れ屋であって、信用して大丈夫である。母の言いたいこともわかるが、子に授ける格言対決では父の圧勝である。

どちらの格言も子供の頃に授かったので、両方組み合わせて素直に取り入れてしまい、「人の目を必要以上によく見る」悪い癖がついた。


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見すぎ。
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by mag-akino | 2014-07-25 23:26


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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