いつもより長い

先日の夜、普段からよく行くレストランに向かって、いつもの道を歩いていた時のことである。アメリカ人の友達と一緒だったのだが、会話が途切れた瞬間にふと「この道、いつもより長くないか?」と思った。そこで友達に「この道、いつもより長くないか?」ときいたら、「確かに長い」と答えたのだった。

こういう感じを昔の人は「狐に化かされる」と言ったのかもね、と言いたかったのだが、「狐に化かされる」というのを英語でどう言えばいいのかわからなかった。いろいろ説明してはみたものの、伝わらなかったようである。友達は「つまりそれはイソップ童話かなにかの、小鳥をおだてて口元で歌わせて食べてしまうキツネ、みたいなことだろう」と言った。全然伝わっていない。そうこうしているうちにレストランに着いた。感覚的には「いつもの二倍弱」長かった。

そういえばこんなこともたまにある。

私はアパートの四階に住んでいる。エレベーターがないのでいつも、あと二階、あと一階、となんとなく数えながら歩いて上っている。降りる時は数えない。数えないでただボンヤリ降りているのだが、たまに降りる途中でふと「いつもより多く降りてないか?」と思うことがある。いつもより一階分多く降りている気がするのである。これも「狐に化かされた」ように感じる。

どちらも測ったり数えたりしていないので、正確にはわからないが、本気で「狐に化かされた」と思っている訳ではない。たぶん気のせいである。先日の場合、「いつもより暗かったこと」がいつもの二倍弱に感じた原因だと思う。夏の間は日没前にレストランにたどり着いていたのだが、ここのところ日没が早くなり、先日そこを歩いた時はもう日がくれていた。明るいと庭の花などを眺めながら楽しく歩けるのだが、暗いと眺めるものがなくて暇なのである。暇なせいでいつもより長く感じたのだろう、と友達に言ったら、これはスンナリ通じた。

なかなか伝わらないことと、スンナリ通じること、のどっちが正解っぽいかというとスンナリ通じた方だと思う。(つまり当たり前なのである。)しかし、どっちが正解だった方がおもしろいか、というと、なかなか伝わらない方だと思う。いつもより一階分多く降りているように感じる件に関しては、今のところスンナリ通じそうな理由が思いつかないので、おもしろいままである。


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私は狐に化かされたような気がした。
I felt as if I had been bewitched by a fox. 
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by mag-akino | 2014-09-23 09:55


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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