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土足とジャクソン・ポロック

ニューヨークに住み始めたばかりの頃、自分でもびっくりするほど頻繁に「土足文化」について考えていました。一日スタジオにいて疲れ切った帰り道、地下鉄の中でふと気づくと「なぜアメリカ人は土足で家にあがることができるのか?」と考えていることがしょっちゅうありました。以前から理解できない文化だとは思っていましたが、そこまで気になっていたなんて…

いろいろ考えた結果、いくつか理由がみつかってきたので列挙してみます。

「日本より湿度が低いから」
日本で土足生活をしたら「泥だらけ」になりますが、こちらだと「砂まみれ」になるので若干ましです。

「日本より照明が暗いから」
レストランも一般家庭も、日本より少し暗いです。これは目の色の違いもあると思いますが、たぶん日本で床が汚れているより目につきづらいです。

「床に対する意識の違い」
日本人ほど「床は汚い」と思っていない気がします。地下鉄に乗っていると、土足で座席にのっている子供を親が注意しない光景をよくみかけます。その子供の靴が隣りの人に当たっていたので、さすがに親も注意するだろうとみていたら、親も隣りの人も全く気にしていませんでした。さらに、ごくたまにですがトイレで鞄を床においている女性をみかけます。こちらのトイレは日本より床とドアの隙間が広いので足元が見えるのですが、その度に絶句してしまいます。これは「汚くても大丈夫」なのではなくて「床(つまり靴の底も)はそんなに汚くない」と思っているからではないでしょうか。

このように、いくつか思い当たることはあっても、やはり私には土足生活は無理です。家の中を靴で歩き回った後、どうやって掃除していいのか見当がつかないし、家の中では靴を抜いでノビノビしたいです。

それでもいくつか、いいなと思う点もみつかってきました。外でも中でも靴なので、家の出入りが日本よりだいぶ気軽で「内と外の境界線が薄れる感じ」があります。ホームパーティーが多いのも、人を招いたり人の家に上がったりする抵抗が少ないからかもしれません。思い立ったらすぐ外に出て行けるような感覚もあるので、行動的になる気もします。
そして、私にとって「土足」といえはジャクソン・ポロックです。美術館で観る度に「ものすごく土足っぽい...」としみじみしてしまう。土足でなくては作れなかった作品、土足文化から生まれた作品、畳の上では絶対に描けない作品、というか絶対に描きたくありませんよね。

そんな訳で、地下鉄でもトイレでも美術館でも土足文化について考えた結果、文化の違いからくる多様性をふまえると「土足文化もまあ良し!」というのが最近の結論です。

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ちなにみに私にとって「畳っぽい」作家といえば円山応挙です。
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by mag-akino | 2011-05-31 21:52

メトロポリタンのおなか

メトロポリタンミュージアムは広いので、一日ではまわりきれません。私は企画展を観に行った時に、その日の気分で観たい常設展示に寄ることにしています。ルーブルや大英博物館もそうですが、無理に全部観ようとすると結局ほとんど忘れてしまうので、時間はかかりますが確実です。近くに住んでいるからできる贅沢な観方でもあります。

入り口を入って左奥にずんずん進んで彫刻を抜けたあたりに、毎回観に寄ってしまう作品があります。円形の台座に3人の子供が載っていて、中央の1人を囲むように2人が眠っている彫刻です。台座のまわりに蟹やサソリなど12星座のレリーフが彫られていたり、フルーツの間で瓶が倒れて水(牛乳かも)がこぼれていたりと、細部もかわいらしく、特に眠っている子供の仰向けのおなかが素晴らしく良いです。足の裏からはじまってモモのつけねからおなかにつながっていくあたりが、くたりと力が抜けつつぷりぷりしていて、何度みても良い。夏の暑い日に、クーラーでよく冷えた頃を見計らってヒタリと触ってみたい。

残念なのは、おなかに比べて頭部の出来が悪いことです。おなかはあんなに優雅なのに、表情も角度もぎこちないので、違う人が彫ったのかもしれません。少なくとも同じ情熱で彫ったとは思えません。冒頭に「ほとんど忘れた」と書いたルーブルですが、ギョッとするほど神々しかった「サモトラケのニケ」は印象的に覚えています。この彫刻も、ニケのようにドカンと頭部が破損していたらもっと良かったかもしれません。

いつも適当に歩くので正確に説明できませんが、とにかく左奥にずんずん進んだレストランの前あたりです。メトロポリタンに行かれる際には、必見のおなかです。
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by mag-akino | 2011-05-25 07:21

どうでもいいことで頭を一杯にする

忙しい時や不安な時は、どうでもいいことで頭を一杯にしたくなります。展示直前で追いつめられたり、制作がうまくいかなくてイライラすると、ゴシップが無性に知りたくなるのはそのためです。芸能人の誰と誰が熱愛しようと破局しようと死ぬほどどうでもいいですが、ただ「へぇ」と思いたい。反対に、ゴシップに異常に詳しくなって「自分が今不安なのだ」と気づくこともあります。

知人のゴシップだと怒ったり喜んだりと気が散りそうですが、有名人のゴシップは、ただ頭を埋めるのにちょうどいい感じです。似たようなことを言っている友達もいたので、みんながそういう気持ちでワイドショーを観ているのかもしれません。

現在、アニメーションの第二部を編集しております。〆切が近づいてきて、寝る直前などに「本当に終わるのか?」とゾッとすることもあります。せっかくニューヨークにいるのでアメリカンゴシップで頭を一杯にしたいところですが、「リンジーがどうの」「マイリーがどうの」と言われても、予備知識が足りないので「へぇ」とも思いません。或る程度対象のことを知っておかないとおもしろくないものですね。わざわざ予習するのも目的を見失って完全に時間の無駄なのでやめておきたいです。

たまにゾッとはしているものの、まだまだゴシップに頼らなくても大丈夫です。近日中に第二部が仕上がりそうなのでコツコツがんばります。
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by mag-akino | 2011-05-20 22:39

8月の日本

5月11日にスペイン南部で大きな地震がありました。3月11日以降、たくさんの外国人の友達が「家族や友達は大丈夫か?」とメールくれたり、知らない方が声をかけてくれたのがうれしかったことを思い出し、スペイン人アーティストの友達にメールを送りました。

すぐに返事があり、彼女はスペイン北部に住んでいるために無事だとわかりました。そのメールのついでに「今度の8月にレジデンスで日本に1ヶ月滞在することになっているのだけど、今日本はどうなっているのか?」ときかれてしまいました。

私が彼女に送った返事をかいつまむと、
「東京近郊にすむ家族や友人は落ち着きをとり戻しているが、それは現状に慣れたためで、東京が安全だということではない。今のところ安全だといわれているが将来どうなるかはわからない。かといって、放射能は目にみえないし、余震がいつあるかはわからないので、日本人は普段の生活をつづけている。8月の滞在中に何があるかは誰にもわからないので、もう1度よく考えてみてほしい。」

これが海外に住む私の率直な意見ですが、日本に住む方はどう感じるでしょうか。当事者ではない人の意見、という印象でしょうか。どちらにしても、行くか行かないかは彼女の判断にまかせる、という無難な内容のメールになってしまいました。

彼女と知り合ったのは2年前のニューヨークです。その頃から日本での滞在制作に興味をもっていて、レジデンス先を探していました。昨年末には東京に旅行で来ていて、「おすすめのギャラリーや美術館を教えて」というメールももらっていました。それから少ししかたっていないのに、こんなに状況が変わっています。

8月の日本はどうなっているかと考えると不安です。6日、9日、15日と、どういう気持ちで過ごすことになるのでしょうか。

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by mag-akino | 2011-05-16 14:37

台湾の友達とKinki Kids

ニューヨークで暮らして2年とちょっとになりますが、1年目のISCP( International Studio & Curatorial Program)にいた時期に3人の台湾人作家と友達になりました。ISCPというのは奨学金を受けた作家やキュレイターがスタジオをレンタルして制作・プレゼンするプログラムで、2人は私と同じISCPの作家、もう1人はLocation Oneという、同じようなプログラムでNY滞在中でした。

台湾から多額の義援金をいただいたというニュースをきいた時、「奨学金を受けているとは言え、3倍くらいの値段で野菜を買うのは精神的に辛い」と一人がこぼしていたのを思い出しました。そう思うと余計にありがたく、3人にお礼のメールを送りました。

そのうちの一人、同年代の女性の作家さんと駅のホームで地下鉄を待っていた時のことです。私たちの前に3歳くらいのかわいい白人の女の子がいました。思わず「白人の子供は絵の中の天使のようにかわいい」と言うと、「日本人の子供もすごくかわいいじゃない!」と返されました。私は台湾人と日本人はそっくりだと思っていたので、どこが違うのかきいてみると、「日本人は色が白くてかわいい」とのことでした。いろいろ話をしているうちに、台湾人の女の子はどうやら「日本人の女の子はかわいい」と思っているらしいことがわかりました。

そうなると「台湾人男性は日本人男性をカッコイイと思っているのか?」も気になって、男性作家のほうにそれとなくきいてみました。芸能ニュースなどできいている通り、ジャニーズ事務所のアイドルは台湾でも人気があるそうです。彼は「SMAPは全員知っている」と言って、他のグループの名前も次々にあげていきました。ただ、知ってはいるものの大した興味はなさそうで、「Kinki Kidsも人気あるよ。でも、なんというか、彼らは『地味』だよね、『地味』」とわざわざ日本語で言ったのが、一番実感がこもっているように感じました。

3人とも今は台湾で作家活動を続けています。楽しい思い出も多い上に、今回の思いやりも身にしみて、ますます台湾に親しみを感じるようになりました。もし今後、台湾に何かあったら義援金を送るつもりです。Kinki Kidsファンの方も気を悪くせずに是非。
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by mag-akino | 2011-05-11 13:30

鳥取県の雨

大学生の時に鳥取出身の方から、雨の話をききました。鳥取県は空がどんよりしていることが多く雨もよく降るので、東京にきたら空がカラリと晴れていてうれしかったそうです。そんな訳で雨が嫌いで、「ちょっとでも雨にあたるのは嫌だ。降ってきたら即、傘を差す」と言い切っていました。

ミヅマアートギャラリーの作家さんの1人が、閉所恐怖症の友人にその症状を詳しくきいていたら自分も閉所恐怖症になってしまったと仰っていました。飛行機に乗り、友人の言葉を思い出した途端にパニックになったそうです。私もちょっとの雨なら濡れて平気だったのですが、鳥取の話をきいて以来、雨にあたりたくない病がうつってしまい、どんなに小雨でも「即差す派」になりました。

マンハッタンの人はなかなか傘を差しません。小雨なら無視、フードをかぶってごまかしたりします。日本のような小さくて軽い折り畳み傘がないせいもあるかもしれませんが、雨の質が日本に比べるとさらりとしているし、乾くのも早いのであまり気にならないのだと思います。私もはじめの頃は頑固に即差していたのですが、あまりにも目立ってしまうので我慢するようになりました。

今ではすっかり元に戻り、ギリギリまで我慢するのが丁度よくなりました。私と雨の近況はこんなところです。日本では「雨にあたる」ことがもっと特別な意味になっているのでしょうか。
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by mag-akino | 2011-05-05 19:27

漢字を何度も書いていると何の字だかわからなくなる現象

NYで何をしているかと言いますと,アニメーション「KiyaKiya」(きやきや)を制作しています。このタイトルは「胸がきやきやする」という古い日本語から作りました。

この言葉とは、澁澤龍彦「少女コレクション序説」中の「幼児体験について」という一編で出会いました。「何とも説明しがたい、懐かしいような、気がかりなような気分」、「既視感(デジャ・ヴュ)」の気分をさすそうです。この言葉と、前から気になっていた「紙芝居」を軸にして制作を開始しました。

と、いうようなことを先日ボストンに行った際に、日本語が堪能なアメリカ人女性に説明していました。デジャブの話の流れで、日常で起こるちょっとした不思議の話になりました。「字を何度も書いていると何の字だかわからなくなる」というのも似たような不思議さですよね、と言ったところ、「大人になって漢字の勉強をしている時に初めて体験した」とのことでした。そう言われてみれば、この現象はアルファベットだと起こりにくそうです。漢字のある国に生まれて得した、と思いました。

ちなみに、私がはじめてこの現象を体験したのは、小学校3年生の時に「消」の字をノートに何度も書いて覚えていた時でした。こういうおもしろいことは子供の頃に体験した方が、トンチンカンな解釈が加わってさらに不思議になって良いと思います。大人になると記憶も雑です。たしかこの現象にはきちんとした名前があると「トリビアの泉」でやっていたのですが、忘れてしまいました。
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by mag-akino | 2011-05-03 12:52


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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