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最近思っていること

3/11から大した進展も安定もしないままに四ヶ月近くたってしまい、現状に慣れてしまいそうで不安です。ニューヨークでも日本人が集まると必ず原発の話題になり、最後は全員で黙り込んで終わる、ということを繰り返しています。

日本にいる日本人と、こちらにいる日本人の現状に対する意識は少し差があると感じます。日本にいる人は現地にいる分あまく考えたい、こちらにいる人は現地にいない分慎重に考えてしまう、という差だと思います。こちらでものすごく心配してメールや電話をすると、東京にいる人の方がよほど落ち着いていて拍子抜けすることもありました。ただ、どちらでもほとんどの人が程度に差はあっても「原発に頼るのはやめた方がいい」と考えているように感じます。でも日本全体ではその方向に進んでいっていませんね。みんなが内心嫌だなと思っている方向に大きな力で押し切られていっている気がします。

その押し切られていく感じ、を遠くからみて「もしかしたら戦争がはじまって、終わっていく時もこういう感じだったのかもしれない」と感じています。(突拍子もない意見でしょうか?)そこで、日本に住んでいる戦争を体験した方の「現状に対する気持ち」をきいてみたいと思っているのですが、高齢の方の意見というのはなかなかインターネットにあがってこないのでよくわかりません。先日、日本に住んでいるご老人と偶然話す機会がありました。もし「今の日本はあの頃の日本と似ている」なんて言われてしまったらどうしようと緊張したのですが、いつまでたっても震災・原発の話題にならないのでこちらからきいてみました。震災に関しては「東北の方は我慢強くて本当に偉い」ということを何度も仰っていて、原発に関しては「まあ今のところ大丈夫だろう」という意見でした。

東北(特に津波被害の大きい地域)の方の毅然とした態度は震災後のニュースで唯一明るい気持ちになる話題でしたが、それを本題にすり替えてはいけないと思います。戦争のことはいったん脇において、今起こっていることの当事者の一人にとして感じるのは、このまま押し切られた場合、私(内心では原発反対と思っている一般人)にも押し切られた責任があるということです。

絶対ということ(100%安全とか、事故の危険性0%とか)はありえないし、もし万が一が起こった場合、直接会って謝れないほど遠くの国の人や、遠い先の人にまで害を与えると思うと、誰も責任をとれないし、責任を持てないことだと思います。今回のことが起こるまで原発になんの興味ももっていなかったことが既に間違っていたと痛感したところで、ここで押し切られるのを止めたい、というのが今の気持ちですが、どうやったらいいのかがわからない。

一つ思いついたのは「日本中の原発反対の女性が団結して子供を生まない」という出産ストライキです。実行されればものすごい威力があると思いますが、ものすごく難しそうですね…

震災後のニューヨークでは、売り上げ全額を寄付する「We Are One」というチャリティー展示が開催されました。オープニングに韓国人の友達がきてくれて「日本にいる家族や友人は大丈夫か?」と気遣ってくれました。韓国のような近くの国の人が気遣ってくれるなんてうれしいと思うと同時に、もし韓国で同じような事故が起きて日本海に汚染水が流れ込んだら、ご近所の日本人に韓国人を気遣う余裕があるか考えてしまいました。気遣ってもらえるうちに、やらなくてはいけないことがあると思います。
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by mag-akino | 2011-06-28 21:16

向上心がないものは馬鹿だ

夏目漱石の「こころ」の中で、若い頃の先生が親友のKに言われた言葉です。正確には頭に「精神的に」がつきます。私がこの言葉と出会ったのは小説ではなく、ドラマ化されたものをテレビで観ていた時でした。確か奥さんの役が葉月里緒菜だったと思って調べたら、1994年にテレビ東京で放送されていました。この言葉をきいた時、ドキっとして思わず隣りで観ていた兄に「『こうじょうしん』って何?」と訊いたのをよく覚えています。それ以来、この言葉がずっと忘れられません。

大人になって考えてみると「馬鹿だ」というのは言い過ぎで、「向上心を持ちつづけられる人はエライ」くらいが丁度いいのではないか思います。ただ、「もう何もかも面倒臭い、一生布団の中で丸まっていたい」というような弱っている時に、この言葉を思い出してしまうと、ますます追いつめられた気持ちになります。

もう一つ、忘れられないのが「赤毛のアン」の中でアンが言った言葉です。こちらは原文がわからないのですが、「私はたくさん失敗をするけど、私のいいところは同じ失敗を二度しないところだ」という内容でした。私は勝手に「同じ失敗を二度してはいけません」と禁止されたような気持ちになりました。

失敗というのは自分の性格(特に短所)が原因でしてしまうことが多いので、大雑把に言えば失敗のほとんどは「同じ失敗」だと思います。アンの場合、「行動にうつす前によく確認をしない」という短所のせいで失敗していることが圧倒的に多い(ジュースと間違えて親友に酒を飲ませる、怪しい行商人から買った染め薬で髪を緑色にする、など)ので、「同じ失敗を二度しないどころか、何十回も同じ失敗をしていることにすら気づいていない」と教えてやりたいところです。でもこんな挙げ足がとれるのもやはり元気な時だけで、「また同じ失敗をした、もう何もかも面倒臭い、一生布団の中で丸まっていたい」というような弱っている時に、さっきの夏目漱石の言葉と重ねて思い出してしまうと、「このまま布団の中で死にたい」という気持ちになります。

ニューヨークに来て一年目の、文化庁研修の終わりかけの時期に、同じ奨学金で滞在していた作家さんとケーキを食べていました。マンハッタンの1Ave、11Stにあるチーズケーキがおいしいお店で、「思ったより英語がうまくならなくてつらい」という話になりました。(チーズケーキを食べながら「つらい」というほどのつらさ)「つらいといえば、夏目漱石と赤毛のアンに呪われている」と、この二つの言葉について説明し、何か忘れられない言葉があるかきいてみました。

彼が教えてくれたのは「堂々としてりゃいいんだよ」という、バイト先の親父(たしか寿司屋)の言葉です。それ以来、「向上心が…」とか「また同じ失敗を…」などと落ち込んだ時に「そういえば寿司屋の親父が」と気を取りなおすようになりました。たしかに、文法や発音がメチャクチャな英語でも堂々と話すと割と通じます。
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by mag-akino | 2011-06-26 05:59

ニューヨークのスズメやリス、そしてイルカ

ニューヨークで暮らして約2年にもなると、随分アメリカに染まった頃かと思われがちですが、相変わらずです。というのも何かにつけて日本と比較して考えるので、日本にいる時よりむしろ日本について考える機会が多いからです。例えばスーパーに行った時も「これは日本より安い」とか「これは日本のより高いのにまずい」などといちいち比較してしまいます。

山田花子さんのマンガに、「スズメってかわいいけど、鳩ってなんだか気持ち悪いわよねぇ」と言ったら「なんで?ねえなんで?」と彼氏に問いつめられて泣く彼女の話がありました。たしかにスズメってかわいいけど、鳩は気持ち悪いですよね。たぶん日本人の大部分がそう感じていると思います。「舌切り雀」の中で、「悪い婆さん」という設定のおばあさんが、障子はり用のデンプン糊をなめたスズメの舌を切るシーンがあるのをみても、やっぱり日本人ならで誰でも「スズメが舌を切られるなんてかわいそう!酷いババアだ」と感じるという前提があるのがわかります。

ニューヨークにもスズメはいますが、あまりかわいくありません。日本のよりちょっと大きめで模様もぼんやりしています。しかもなんだかすすけているので「やっぱりNYは日本より乾燥しているから砂埃にまみれてるんだな」と最初のころは思っていたのですが、よくよく見たら埃ではなく頭の上の部分に元から灰色の斑点がありました。鳴き声も「チュンチュン」というより「ジュジュジュ」という感じです。小さくて模様がキレイでかわいらしく鳴く、というのが揃っているから日本のスズメはかわいいということがよくわかりました。もしかしたらニューヨーカーは「舌切り雀」を読んでも「糊をなめたスズメが悪い。舌を切られて当然だ」と思うかもしれません。

日本の街中では見かけないけれど、マンハッタンでは身近な動物がリスです。リスがヒョイっと現れて、タタタと走り去っていくのに出くわすと、慣れてきたとはいえやっぱり「かわいい」と思ってジッとみてしまいます。ところが、こちらの子供が棒でリスを追っ払っているのをみて、どうやらニューヨークではリスはかわいい動物という枠に入っていないようだと気づきました。珍しい、というのもかわいさの要素なのかしれません。

ちなみにネズミの扱いは日本と同じです。地下鉄の駅構内で、私の前を歩いていた白人女性が曲がり角で叫び声をあげたので「死体でもあったか!?」と思ったら、ドブネズミがいただけでした。「ニューヨークの駅に死体」というのも思い込みが強いな、と後でおかしくなりましたが、結構思い込みで「かわいいか、かわいくないか」が決まるということもあると思います。日本人は「リスとスズメはかわいい」とみんなして思い込んでいるのかもしれません。

さて、なぜ鳥の話をしたかといいますと、これも思い込みからです。震災後、アメリカの報道が気になってNew York Timesのインターネット版を日に何度もみてしまうようになりました。ここ数日World Newsのページの右端に「灰色の鳥」がのっていて、「気持ち悪い鳥だな」とずっと思っていたのですが、今朝よくよくみたら「イルカのななめ横顔のアップ」でした。思い込みはよくないですね。

それにしても前から思っていたのですがイルカは本当にかわいいでしょうか?私はイルカをテレビで観る度に「気持ち悪い」と思います。タコ、イカが気持ち悪いのと同じようにイルカが気持ち悪いです。以前、伊豆で浅めのプールでユラユラしながらレタスを食べているジュゴンをみましたが、それも鳥肌がたつほど気持ちが悪かったです。どうやら私は水の中にいるプラスチックの様なものが苦手らしくて、ディズニーランドのジャングルクルーズも怖いです。水面からプラスチックがどんどん出てくるのがものすごく気持ち悪い。イルカは国際的に「かわいい」と思われているようなので、きっと私の個人的な趣味の問題だとは思うのですが、珍しさと思い込みをいったん脇に置いて、是非もう1度じっくり考えてみてほしいです。イルカがかわいいというのは気のせいじゃないでしょうか…

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この文章は「fellows! vo.17」(エンターブレイン)に寄稿したものです。
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by mag-akino | 2011-06-20 21:52

学研のおまじない

先日、「不思議というほどでもないこと」について書いたら、「結構不思議なこと」を思い出したので忘れないうちに書いておこうと思います。

小学生の時に学研を読んでいたら「なくしもののおまじない」が載っていました。「なくしたものを心に思いながらハサミの刃に輪ゴムをグルグル巻き付けて机の上に置いておく」というものです。何もなくしものがなかったので、母にきいてみると、ちょうど手袋を片方なくしたところでした。早速母の黒い手袋を思い浮かべてやってみました。

次の日、小学校の給食の後、その週は昇降口の担当で下駄箱の付近を掃除していました。下駄箱の裏もホウキで掃こうということになり、友達と一緒に下駄箱を動かすと、裏から黒い手袋が出てきました。

先日のタワシの話に比べて、大分不思議です。この後も何回かこのおまじないを試して、なくしものが出てきた覚えがある(手袋ほど不思議な出方をしなかったせいか具体的には覚えていない)ので、なぜだかわかりませんがこのおまじないは効くようです。

もう一つ、経験的に効くと知っているおまじないは「巣鴨のとげ抜き地蔵」です。いろいろ作法はあるようですが、私は指にトゲが刺さってどうしても抜けない時に、紙に描かれたお地蔵さんを患部に巻きました。しばらくしてとると、トゲがなくなっています。

おまじないが本当に効くと驚きます。「そもそも効くからおまじないなのだ」と、自分に言い聞かせてもそんな理屈では気がすみません。あまり不思議だと騒ぐともう効かなくなるような気もするので、子供の頃はただ静かにうろたえていました。

「とげ抜き地蔵」の場合、トゲが無事とれたら感謝しつつお地蔵さんを飲み込み、それでおしまいです。なくしものをしたらハサミにゴムを巻き、トゲが刺さったら指にお地蔵さんを巻き、効いたらそんなものだと受け止めて、そのままそっと忘れてしまうのが良い気がします。
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by mag-akino | 2011-06-15 11:30

不思議というには地味なこと

私は子供の頃の印象的な出来事や記憶を元に作品を作っています。今作っているアニメーションもいろいろな思い出の影響を受けていて、そのうちの一つが「病院の絵本の思い出」です。

赤ん坊の頃からのかかりつけの病院の待合室に、行く度に読む絵本がありました。ある日いつものようにその絵本を読んでいたら、いつもと結末が変わっていました。

「あれ?」とは思いつつも特に気にせずに、次の機会に又読んだ時には元に戻っていました。たぶん勘違いだとは思いますが、もう25年以上前の不思議な思い出です。

さてここ最近、不思議というには地味なことが起こっています。自宅の洗面所に置いてある、洗面台を磨く用のアクリル毛糸のタワシ(何年か前に日本ではやったやつ)がふと気づくと床に落ちている、というなんでもないことですが、以前は床に落ちていたことがなかったので、回数が重なって「あれ?」と気になりだしました。顔を洗った後などに、何か新しい習慣のような癖のようなタワシを落とす動作でもしているのかなと考えているうちに、「そんなところに落ちるはずがない」という隙間にはまっているのに出くわして、「…これは不思議。…というか『地味な怪奇現象』なのでは?」と思うようになりました。

そこで思い出したのが、小学生の時に隣りの小学校に通う友達からきいた「トイレの石鹸の話」です。その小学校には幽霊が出るという噂のトイレがあって、友達が掃除当番になった時、ちょっと目を離した隙に手洗い用の石鹸がどんどん移動したそうです。地味さが我が家のタワシ事件によく似ている。

病院の絵本のタイトルは忘れてしまいましたが、絵は藤城清治さんでした。今でも目にする度に必ず思い出し、藤城さんの絵には特別な愛着のようなものを感じています。

タワシの方は「不思議(地味)」と思ってから、洗面所を出る時に落ちていないかチェックするようになり、それ以来1度も落ちているのを見ていません。
① やはりただの偶然だった。
② 隣りの小学校のトイレの幽霊が20年かけてニューヨークの我が家に現れた。そしてバレたのでやめた。
差し当たってどちらでも良いですが、20年後あたりにまた地味な怪奇現象が起こるかもしれないので、一応覚えておこうと思います。
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by mag-akino | 2011-06-08 07:22


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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