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本当かはわからないけどウソではない話

高校の時の知り合いに、おもしろい話をする人がいました。不思議な体験談をたまにきかせてもらっていたのですが、1時間以上集中してきいてしまうくらい話のうまい人でもありました。

特に印象的で忘れられないのが「幽体離脱して三途の川を見た話」です。大雑把に要約すると、コタツでうたた寝してたら幽体離脱して三途の川のほとりについて川の向こうで着物の若い女性が叫んでいて、意識が戻って母親によくよくきいたら若くして亡くなった大叔母がいて、しばらくしてタンスの奥にその女性が着ていたのと同じ着物を発見した、という話。

体験談としてはよく聞く話なので、私も見たことはなくても「私なりの三途の川のイメージ」を持っています。たぶん私が何かで死にかけたら夢うつつにその三途の川を見るのではないかと思います。タンスの着物の件も不思議ですが平凡な結末で、「まあ偶然だろう」という内容です。

ただ、この人の話が他と違うのは、話の細部がとても具体的で新鮮だったところです。大枠だけだったら「夢と偶然」ですが、細部のオリジナリティをふまえると、「…本当のことかはわからないけど、とりあえずこの人にとってウソではないな」と思いました。

特に魅力的に感じたデイテール。
・ 幽体離脱したら、天井の隅にいつの間にか穴が空いていてすいこまれた。中はびっしりと水晶が生えた空洞で、とても心地良い音楽が流れていた。そこをゆっくり回転しながら上昇しつつ、「モーツァルトはこの音楽を楽譜に書き留めたのだ!」と確信した。
・狐が高速で回転して、よくお寺などにあるタマネギ型のやつになった。

水晶がびっしり生えた空洞や、高速回転する狐のことを思うと、なんともいえず魅力的で「是非本当であって欲しい」と思います。この人はこれ以外の不思議な話もしてくれましたが、どれも「本当かはわからないけどウソではない話」でした。

全く別にもう一人、こちらも高校の時の知り合いでおもしろい話をする人がいました。不思議体験ではなくて、日常の中のおもしろい出来事をたくさん話してくれましたが、今になってよくよく考えると、この人の話は全部ウソだったのではないかと思います。

夢か夢でないか本当かウソかよくわかりませんが、どちらもきけて良かった話です。
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by mag-akino | 2011-08-26 06:45

壁一面のでかい顔

出口の脇にある壁にでかい顔(「大きい」というより「でかい」)がくっついていて、その顔が話しかけてくるので幼稚園から帰れない、という夢を子供の頃に何度もみました。

ちょうど鎌倉の大仏の頭部から「顔」の部分をスパッと切ってはりつけたような感じです(顔も大仏っぽかった)。その顔に脅されるわけではなく、通り抜けようとすると、ひょうきんな感じで話しかけてきたり、ちょっと嫌味な質問をしたりするのでどうしても帰れないのです。監禁されるというよりも、やさしく抱きしめられてズルズル引き留められるような拘束のされかたで、目が覚めるとドッと疲れていました。

最近またこの夢をみたようです。(実はっきり覚えていないのですが、その割にイメージが具体的なので、たぶん。)今度は出口の脇の壁ではなくて、ニューヨークの自宅の窓から見える隣りの建物の壁にくっついていました。

10月には個展のために少し帰国する予定ですが、正直なところ不安です。偶然この時期に日本にいなかったために、日本にいる人よりも覚悟しきれない部分があり、日々きこえてくるニュースにどんどん怖くなります。とは言っても、帰らなくてはならないし、帰りたいとも思うし、一生帰らないわけにはいかないし、でもやっぱり帰りたくないような…という心境です。

どうやら私の場合、「帰りたい」「帰れない」「帰らなくてはならない」「帰りたくない」というようなことをグルグル考えていると、でかい顔が壁にくっつくようです。
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by mag-akino | 2011-08-12 01:06

もう一回

大学生の時、「テレタビーズ」というイギリスの子供番組のキッカイなキャラクターが好きになり、よく観ていた時期がありました。

「ますますキッカイ」と思ったのは、番組の中で「全く同じ映像が二回流れること」でした。お腹のテレビに映し出された映像が終わると(テレタビーズの頭にはアンテナがあり、映像を受信するとお腹のテレビに映る)、テレタビーズたちがキャーッと喜んで「もう一回!もう一回!」と叫び、本当にもう一回、全く同じ映像が流れます。「…何だこれは?」と思い、友達に話したら「幼児は同じことを繰り返すのが好きなんだよ」と言われました。

同じことを何度も繰り返す、と言って思い出すのは、中学高校時代の電車通学です。私は6年間、往復2時間半ほどの電車通学をしていました。そしてそのほとんどの時間、椎名誠さんの「哀愁の街に霧が降るのだ」と夢野久作短編集を読んでいました。

「哀愁の街に霧が降るのだ」は椎名誠さんの自伝的小説(ご本人としては「他伝的バカ話」だそうです)で、厚めの文庫本上下二冊組でした。上巻のはじめの方の高校の入学式で、みるからに不良の椎名さんの耳元に、ごく普通の新入生の沢野ひとしさん(あのイラストレーターの沢野ひとしさん)が「空気銃で撃つぞ!」と囁くシーンがあります。私はなぜかこのシーンが異常に気に入っていました。

また夢野久作の「死後の恋」の、好きな女性のはらわたの中から宝石をほじくり出す件や、「白菊」の部屋の中の雰囲気、「空を飛ぶパラソル」の轢かれた女のお腹の様子なども、何度読んでも心を掴まれて「もう一回!」という気持ちになりました。

つまり「ものすごく好きなごく一部」をより楽しむために全編を隈無く繰り返し読んでいたのですが、全編となると好きなシーンにたどりつくまでそれなりに間があります。一巡すると最初からもう一回!と延々と繰り返し、7冊ほどの文庫本で6年間過ごしてしまいました。

テレタビーズの「もう一回!」に、ハッと恥ずかしくなりつつも、今でも同じことを繰り返すのが好きです。アニメーションは制作過程で似たような作業を長時間繰り返します。アニメーションを作りたいというよりも、一人で長時間同じことを繰り返したいからアニメーションを作っているのではないかと思うこともあります。
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by mag-akino | 2011-08-09 08:41

上を見上げて、さらに下を確認する

夏のマンハッタンを歩いていると上から水が降ってきます。雨かなと思って見上げると、大抵クーラーからの水です。こちらのクーラーは、窓を少し開けてはめ込むというのが一般的で、そこから水がポタポタ垂れるのです。きちんとネジなどでとまっているはずですが、見上げるたびに「いつか頭に落ちてくるのではないか」と考えてしまいます。

上を見上げるといえば。
私の実家はマンションの7階で、帰宅するたびに下から自分の部屋の窓を見上げる癖があります。小学校低学年の頃、学校からの帰りにいつものように上を見上げたら、私の部屋のさらに右斜め上、10階の踊り場の壁の「外側」のでっぱりに若い女性が座っていました。

今考えると完全に「飛び降り直前を第一発見」なのですが、全く気づかず「大人が遊んでいる!」と興奮して真下に走って行きました。下には女性のローファーの靴が転がっていて、さらに興奮して(ブランコから靴を飛ばして距離を競う、という遊びをよくしていたのでそんなものかと思った)下から手を振ったら目が合いました。そうこうしているうちに管理人さんに伝わって、女性は取り押さえられました。「来るな」と言われたのですが、こっそり見に行って再び目があった女性は、20代前半の普通のOLみたいな人でした。

この出来事を思い返して描いたのが「2001年版逆さの思い出」というマンガです。あの時の女性が自分だったらと想像すると妙に現実味があり、落下途中の逆さの風景を生々しく思い返すことさえできる、というような内容でした。

実はこの話にはさらに続きがあります。マンガの原稿を編集部に届けた数日後、大学から帰宅すると、ちょうど私の部屋の下あたりに2、3人の人が遠巻きに集まっていました。嫌な予感がして近づくと、若い女性が「ぺたん」という感じで落ちていました。「私がマンガに描いたせいであの時の女性が今度こそ飛び降りてしまった」ように思えてものすごく怖くなり、編集部に無理をいって掲載を取りやめてもらいました。

もちろん女性は別人だったのですが、それ以来私には「上を見上げて、さらに下を確認する癖」がつきました...という怖い思い出を、10年たったので書いてみました。
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by mag-akino | 2011-08-02 09:50


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


by mag-akino

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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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