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六割日記 その二 2017年3月5日「草原のマンティス」

 先日、アメリカ人の夫と話していたらふと「カマキリ」の話題になった。なぜカマキリの話題になったのかは覚えていない。カマキリという名前の意味を英語で説明しようとして、「鎌」の英訳でつまずいて辞書を引いたりしているうちに忘れてしまったようだ。ちなみに、鎌は英語で「sickle」、カマキリは「mantis」なのだが、「マンティス」より「カマキリ」の方がカマキリっぽい感じがするのは日本人だけだろうか。

 私の実家はマンションの七階にある。まだ日本に住んでいた頃、その実家の玄関の前の廊下のところでカマキリとセミが闘っているのを見た。夏のある日、自室で制作していると、外で異様にセミが騒ぐのでドアを開けてみたら、セミがカマキリに半分食べられていたのである。カマキリついでに、夫にこの話もしたのだが本当に伝わったのか怪しい反応をしていた。私の英語が変だったのかもしれない。

 ついでに思い出したので「カマキリは賢いと思う」という話もしてみた。子どもの頃の話である。近所の空き地で子カマキリを捕まえた私は、とりあえず家に連れ帰り、母に見せたり、眺めたりした。しばらく楽しんで、そろそろ元いたところに返さないと、と思ったのだが面倒臭かったので、玄関を開けて、廊下にカマキリを離して、「では」と戸を閉めたのである。それからしばらくしたある日のことである。小学校から帰ってきたら、玄関の前にカマキリがいた。先日捕まえたカマキリと同じ色で、少し大きかった。私は「あのカマキリが大きくなって戻ってきた」と思った。そして、これと全く同じことがその後二回も起こったのである。三匹のカマキリが私のところに帰ってきたことになる。

 「という訳でカマキリは賢いと思う、鮭と同じように帰ってくるのだ」と夫に話したのだが、夫はますます怪しい反応をしていた。今度は英語も変な上に、話自体も変だったので、ますます伝わらなかったのだろう。

 アメリカのマンティスも帰ってくるのだろうかと考えながら、本を読んでいるうちに眠ってしまって、夢を見た。私は子どもに戻っていて、アメリカのどこか草原にいた。足元にマンティスがいたので「私を覚えているか」と訊いてみたら、英語で返答されて聴き取れなかった。草原には風が吹いていて、マンティスの声は小さかったのである。私はいつまでたってもヒアリングが苦手で、周りがうるさかったり、早口だったり、ちょっとしたことで聴き取れなくなってしまう。もっと耳を鍛えないと、と思いながら目が覚めた。


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by mag-akino | 2017-03-06 10:23


アーティスト近藤聡乃ニューヨーク滞在制作記


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近藤聡乃 / KONDOH Akino

2012年5月までの文章が本になりました。

不思議というには地味な話』(ナナロク社)

57編、すべてに描き下ろし挿画つき。26ぺージの描き下ろし漫画「もともこもみもふたも」も収録。



2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」で知久寿焼(音楽グループ、元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品で NHKデジタルスタジアム、アニメーション部門年間グランプリを獲得。シャープペンを使って繊細なタッチで描くドローイングに加え、最近 では油彩にも着手している。2008年、2冊目のマンガ単行本「いつものはなし」(青林 工藝舎)を出版。

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